開業のお金

開業するときに使える補助金・支援制度の全体像

この記事の結論

  • 最初に、市区町村の「特定創業支援等事業」(創業塾・個別相談など)を受けて証明書をもらう。会社設立の登録免許税が半分になり、日本公庫の融資の特別利率や、持続化補助金〈創業型〉の要件にもつながる
  • 開業資金の柱は日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」(融資限度額7,200万円)。補助金は後払いなので、融資や自己資金とセットで考える
  • 持続化補助金〈創業型〉は補助上限200万円・補助率2/3。第4回は2026年11月5日受付開始、12月15日締切で、開業日と支援を受けた日がどちらも締切から過去1年以内であることが要件

開業するときの公的な支援は、**「市区町村の創業支援」「日本公庫の創業融資」「補助金」**の3つに分けると見通しがよくなります。どれか1つを選ぶのではなく、順番に組み合わせて使うものです。

この記事では、2026年10月時点の中小企業庁・日本政策金融公庫・補助金事務局の公表資料をもとに、それぞれの中身と使う順番を整理します。制度は公募回や年度ごとに変わるので、申し込む前に必ず最新の公募要領や窓口で確かめてください。

開業した人がいちばん苦労するのは「お金の工面」

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時に苦労したこととして「資金繰り、資金調達」を挙げた人が56.9%で、項目の中でいちばん多くなっています。

この調査の対象は、日本政策金融公庫が2024年4月〜9月に融資した企業のうち、融資の時点で開業後1年以内だった企業です(回答2,165社、三つまでの複数回答)。開業した人全体の数字ではありませんが、開業資金の準備に苦労する人が多いことがわかります。公的な支援を知っているかどうかで、準備のしやすさは大きく変わります。

開業前後のお金でよくある失敗

創業セミナーを受けたのが開業より1年以上前だったため、持続化補助金〈創業型〉の「支援を受けた日と開業日が、どちらも締切から過去1年以内」という要件に合わなかった、というケースがあります。受講したのが家族だった場合も、個人事業主本人でなければ対象になりません。もう一つ多いのが、補助金が出る前提で設備を先に発注してしまうケースです。補助の対象になるのは、交付決定日以降に発生し、補助事業の期間中に支払いが終わった経費だけです。

よく見るのは、次の3つです。

  1. 補助金をもらってから払えばいいと思う:持続化補助金〈創業型〉の公募要領は、補助金は後払いで、自己負担が必要だと書いています。
  2. 会社を作ってから創業セミナーの存在を知る:特定創業支援等事業の証明書がないと、会社設立時の登録免許税の軽減は受けられません。
  3. 補助金の要件の「期間」を見落とす:持続化補助金〈創業型〉は、開業日と支援を受けた日の両方が決められた期間内であることが要件です。

1. 市区町村の「特定創業支援等事業」

どんな支援か

中小企業庁によると、市区町村は産業競争力強化法にもとづいて「創業支援等事業計画」を作っています。その計画の中で、市区町村が商工会・商工会議所や金融機関などと連携して行うのが「特定創業支援等事業」です。個別相談や、複数回の授業を行う創業塾、創業セミナーなどがあり、「経営・財務・人材育成・販路開拓」の知識を学べます。

受講して市区町村が発行する証明書をもらうと、次の支援につながります。

受けると何が変わるか

支援 内容
会社設立時の登録免許税の軽減 株式会社は資本金の額×0.7%(最低15万円)が0.35%(最低7.5万円)に、合同会社は0.7%(最低6万円)が0.35%(最低3万円)になる
日本公庫の新規開業・スタートアップ支援資金 認定市区町村が発行する有効な証明書を取得した人は、特別利率の対象になる
持続化補助金〈創業型〉 特定創業支援等事業による支援を受けたことが申請の要件

個人事業として始める人は登録免許税の軽減は関係ありませんが、融資の特別利率と持続化補助金〈創業型〉の要件にはかかわります。どの市区町村がどんな内容を行っているかは、中小企業庁の「創業支援等事業計画について」のページにある認定自治体の一覧や、自分の市区町村の創業支援の窓口で確かめられます。

2. 日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」

日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資の中心となる制度です。

項目 内容
使える人 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人(適正な事業計画を作っており、遂行する能力が十分あると認められる人に限る)
使いみち 事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金・運転資金
融資限度額 7,200万円
返済期間 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)
利率 基準利率。女性、35歳未満または55歳以上の人、特定創業支援等事業の証明書を取得した人などは特別利率

申し込むときは創業計画書を出し、事業計画の内容を確かめられます。審査の結果、希望どおりにならないこともあります。創業計画書の数字は、会計ソフトの試算や開業資金の見積もりをもとに作ると説明しやすくなります。

3. 補助金(持続化補助金〈創業型〉と自治体の補助金)

持続化補助金〈創業型〉(第4回公募)

補助金事務局が公表している第4回の公募要領(第8版・2026年5月27日)の主な内容です。

項目 内容
対象 創業後1年以内の小規模事業者など。認定市区町村などが行う特定創業支援等事業による支援を受けていること
期間の要件 「支援を受けた日」と開業日(設立年月日)の両方が、受付締切から過去1年以内(第4回は2025年12月15日〜2026年12月15日)
補助上限 200万円(インボイス特例の対象事業者は50万円上乗せ)
補助率 2/3
主な対象経費 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費
受付 2026年11月5日開始、12月15日17時締切(予定)
事業支援計画書(様式4) 地域の商工会・商工会議所に発行を依頼する。発行の受付締切は2026年12月4日
申請方法 電子申請のみ。GビズIDプライムのアカウントが必要

公募要領は、審査があり不採択になる場合があること、補助金は後払いで自己負担が必要なこと、小規模事業者持続化補助金〈一般型〉とは重複して申請できないことを注意事項に挙げています。また、事業計画づくりで第三者の支援を受ける場合に、高額なアドバイス料金を請求する業者に注意するよう呼びかけています。

自治体独自の創業補助金

都道府県や市区町村が、独自に創業者向けの補助金や利子補給を用意していることがあります。内容や時期は自治体ごとに違うので、次のような方法で探します。

  • 自分の市区町村・都道府県の創業支援の窓口に聞く
  • 中小機構の「J-Net21 支援情報ヘッドライン」で、地域と「創業」で検索する
  • 中小企業庁の「ミラサポplus」で補助金・助成金を検索する

使う順番

  1. 開業の半年〜1年前:市区町村の創業支援の窓口に相談し、特定創業支援等事業(創業塾・個別相談など)の日程を確かめる
  2. 受講したら:証明書を発行してもらう(会社を作るなら設立登記の前に)
  3. 開業資金の計画を作る:自己資金・日本公庫の融資・補助金を並べ、補助金は後払いであることを前提に資金繰りを組む
  4. 開業したら:開業日と支援を受けた日を控えておき、持続化補助金〈創業型〉の受付期間と期間要件を確かめる

開業届や青色申告承認申請書など、税務署に出す書類は開業届の出し方と期限、一緒に出す書類にまとめています。

チェックリスト

  • 自分の市区町村が特定創業支援等事業を行っているか確かめた
  • 創業塾や個別相談の日程と、証明書の出し方を確かめた
  • 会社を作るなら、証明書をもらってから設立登記をする段取りにした
  • 日本公庫の創業融資の窓口に相談する時期を決めた
  • 補助金は後払いだと理解し、立て替える資金を用意した
  • 持続化補助金〈創業型〉の受付期間と、開業日・支援を受けた日の期間要件を確かめた
  • GビズIDプライムのアカウントを取った(補助金を申請する場合)
  • 自治体独自の創業補助金を窓口やJ-Net21で探した

まとめ

開業するときの公的な支援は、市区町村の特定創業支援等事業を入り口に、日本公庫の創業融資と補助金を組み合わせて使います。特定創業支援等事業の証明書は、登録免許税の軽減、融資の特別利率、持続化補助金〈創業型〉の要件とつながっているので、開業の準備を始めたら最初に市区町村の窓口へ相談してください。制度は変わるので、申し込む前に最新の公募要領や窓口で確かめることも忘れずに。

出典